(参考までに海老名総合病院で実際に行った新人・中途採用者向けの座学のスケジュールです)
病院栄養士の卒後教育はみなさんどうしていますでしょうか?
勉強会を企画する側(病院の先輩栄養士や上司)、勉強会を受ける側(新卒、中途採用者)共に悩みが尽きないテーマではないでしょうか。
そもそも、病院栄養士にとって卒後教育は必要なのか?
卒後教育には何が必要なのか?
入職の1回だけでなく、定期的だったり、ラダーの様にキャリアに応じて勉強会をやるべきかなのか?
勉強会の方法は座学のようなoff-the jobトレーニングが良いのか、on-the jobトレーニングをするべきなのか?
などなど、考えるべきことはたくさんありそうです。
今回は卒後教育について考えたいと思うのと、実例として卒後教育として実施した座学形式の勉強会のスケジュールと内容を公開します。
病院栄養士にとっての卒後教育とは?
大学の授業では『患者さん』がいない状態での勉強になります。
現在では臨地実習の期間を長くするなど各大学でカリキュラムを整備しているところだと思いますが、
それでも、実際に病院に勤務している栄養士と比べると、当然ですが患者さんに接する時間は圧倒的に卒後の栄養士が長くなります。
そこで、問題や課題になるのが以下のことではないでしょうか?
- 患者さん個々によって病態や栄養管理が異なること
- 単一疾患の患者さんがほとんどいないため病態の優先順位が難しこと
- 担当病棟や担当患者さんによっては大学で勉強したことがない疾患の栄養管理をしないといけないこと
さらに上記の課題をタイムリーに解決しなけれならないことに加え、問題や課題が順不同にやってきます。
これらの問題や課題を踏まえると卒後教育のポイントは『解決までのスピード』と『問題や課題に対する事前準備』ではないでしょうか。
解決までのスピードは論文を読むことで解決すると思います。
ただ読むだけでは知識量が増えるだけなので、解決した論文を的確に探せるのも含めて論文を読むということです。
問題や課題に対する事前準備は座学を含めて知識を蓄積することと、いざ問題や課題に直面した時に知識を引き出せる引き出し力だと思います。
『解決までのスピード』については、違う機会にブログとして記したいと思います。
今回は『問題や課題に対する事前準備』について書きたいと思います。
問題や課題に対する事前準備
問題や課題に対する事前準備には知識量が必要だと思います。単純な知識量です。
ただし病院栄養士が習得しないといけない知識量は膨大です。真剣に勉強して数十年もしかするとリタイアする時でも知識量が足りていないということもあり得るでしょう。
そこで専門性を高めることが必要です。専門性を高めるとは、ただただ勉強することではありません。
専門性とは膨大に必要な知識を『選択と集中』を適切に行い、ある分野に関しては事前準備を万全に整えた状態のことです。
これは思っている以上に大事なことだと思います。
大事なことなのでもう一度書いておきます。勉強でも必要なことは『選択と集中』だと思います。
選択と集中を行ったことが前提で病院栄養士の卒後教育について書いておきたいと思います。
知識の習得にはon-the jobトレーニングが適切だと思います。on-the jobトレーニングの有効性については異論はないのではないかと思います。
しかし、on-the jobトレーニングをより効率的に行うためには座学を含めたoff-the jobトレーニングが必要です。
全く英単語を知らずに英語の語学留学をするより、ある程度の英語がわかる状態で留学した方がより良い語学留学になると思います。
なぜなら『その英語の意味教えて』や『もう1回話して』と英語で言えたら、ネイティブの方から本場の英語を教えてもらえます。
栄養管理も同じく『この栄養管理はどういう意味ですか?』と何がわからないのかがわかる状態は勉強する上で重要です。
何がわからないのかわからない状態では適切な質問ができず勉強の効率が非常に低下します。
そこで座学でも構いません知識を増やすことを優先しましょう。
ただし先にも述べましたが『選択と集中』が必要です。選択と集中をしていくときのポイントは以下の通りではないかと思います。
- 他者から期待されている役割がある(上司、病院から求められていることなど)。
- 自分のキャリア形成や自分が進みたいと思っている分野と合致している。
- 他者が掘り下げていない分野がある。
最も理想的なことは上記3つを全て満たしているところがあるかどうかです。
もちろん勉強を受ける側も勉強を受けさせる側もどちらも意識しないといけない事項だと思います。
勉強会を企画することは大変ですね。1回でうまくいくことはないと思いますので、少しずつ良い勉強会になるように工夫していく必要があると思います。
勉強会の企画
TOPに2019年に実際に座学形式でおこなった勉強会のスケジュールと内容を公開します。
この勉強会のコンセプトは急性期(高度急性期)の栄養管理を行うことが前提です。
また、2019年は『循環器内科・心臓血管外科』と『消化器外科』の強化を行うことがメインでしたので、これに沿った内容を扱っています。
基本的な学習
1: 解剖生理 3: 脱水と電解質 9: 栄養アセスメント 10: 褥瘡 11: EN・PN 12: 診療報酬 13: 論文検索
循環器内科・心臓血管外科
5: 心不全 6: 腎不全
消化器外科
2: 絶食 7: 周術期
おまけ
8: 脳血管疾患
当時の勉強会のコンセプトは以上の通りです。
各病院で強化したいテーマや各スタッフの伸ばしたいテーマを勉強会として企画したら良いのではないかと思います。
そして、必ず座学のあとは座学を検証・復習するためのon-the jobトレーニングをセットで企画することが大切だと思います。
座学だけで終わると数ヶ月、数週間後には座学の勉強会の内容が忘れ去られていることでしょう。
これは学習者が悪いわけでも企画者が悪いわけでもありません。
使わない知識は忘れ去られる運命です。
そうならないように使う知識を座学で学び、患者さんを通して実践することができれば勉強会は卒後の勉強として大成功でしょう。
学生のときはテストの点数が評価になりましたが、病院での勉強の成果は患者さんや患者さん家族の笑顔だと思います。
テストの点数よりも勉強するためのモチベーションには十分ではないでしょうか。
それでは、より良い卒後の勉強会が実施できるようにお祈りしています。