質問内容
以前、N.Lab『何でも相談Live』でヘルスケア・レストラン2022 4月号について質問をもらいました。
長期絶食に対し消化態流動食はリンパ球数などを考慮すると長期使用は望ましいとは言えないとありました。そこの理由がイマイチ分からず教えていただけませんか?
Nutrition Laboratoryチャンネル『【第23回】Nutrition Laboratory何でも相談LIVEより
こちらの記載内容については、2022 4月号を確認していただきたいと思います。
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実際の誌面の中では、「これはあくまで主観ですが・・・」となっています。
主観なので、誌面を載っている先生の経験ということでした。
で、終わってしまうと意味がありませんので、解説していきたいと思います。
経腸栄養剤の種類
今回の内容は経腸栄養剤の組成や物性について対談している中での発言内容のようです。
そのため、ここからの解説が発言された先生の意図と異なる可能性があります。
その点だけはご承知おきください。正確な発言内容についてはヘルスケア・レストラン2022 4月号14Pに記載されています。
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それでは、今回のポイントは経腸栄養剤の種類と特徴を把握することに尽きると思います。
そのため、経腸栄養剤の種類について解説します。
たんぱく質による分類
まず、経腸栄養剤の分類方法は様々ありますが下記の分類方法があります。
- 半消化態栄養剤:たんぱく質
- 消化態栄養剤:ペプチド(アミノ酸が2〜3つくっついたもの)
- 成分栄養剤:アミノ酸
この3つの栄養剤の違いはたんぱく質の正常が異なります。
その他の栄養素については栄養剤によって異なります。
食物繊維による分類
しかし、たんぱく質以外にも半消化態栄養剤 vs 消化態栄養剤・成分栄養剤で異なる栄養素がありました。
それは、『食物繊維』です。
現在、国内で販売されている成分栄養剤は食物繊維を含む栄養剤はありません。
そして、消化態栄養剤も最近まで食物繊維を含む栄養剤がありませんでした。
しかし、近年では下記の消化態栄養剤にも食物繊維が含まれています。
- 大塚製薬 ハイネックス®️イーゲル(食品)
- ネスレ ペプタメン プレビオ(食品)
つまり、以前までは消化態栄養剤=食物繊維なしでした。
さらに、薬剤扱いのの経腸栄養剤も以前までは食物繊維を含んだ栄養剤はありませんでした。
例:エンシュア、ラコールなど
しかし、薬剤扱いの経腸栄養でも食物繊維を含有する栄養剤が出てきています。
- アボット エネーボ®️配合経腸用液(医薬品)
この分野も以前までは、薬剤扱いの経腸栄養剤=食物繊維なしでした。
しかし、最近では食物繊維で経腸栄養剤を分類することはできなくなっています。
食物繊維と腸管免疫
今回、誌面で消化態栄養剤は食物繊維が入っていないといった文脈で書かれていそうです。
そこで、ここからは食物繊維と腸管免疫について解説します。
食物繊維と腸管絨毛
食物繊維による腸管絨毛の研究は下記のものが良く引用されますので紹介です。
食物繊維を添加した経腸栄養剤がラットの小腸の機能および絨毛の形態に及ぼす影響
日本栄養・食糧学会 46巻(1993)1号
※.1990年台の論文のため、食物繊維と腸管免疫に関する論文を知っている方はコメントください。
結論として「食物繊維が少ないと腸管絨毛の萎縮を起こす」と書かれています。
腸管絨毛の萎縮がリンパ球数に対してどの程度提供するかは、この論文には書かれていません。
しかし、少なくとも腸管免疫にとって重要な役割を果たす腸管絨毛の萎縮は免疫低下を引き起こすことは想像できます。
消化態栄養剤と免疫
はじめに戻りますが、「消化態栄養剤の長期使用はリンパ球数などを考慮すると・・・」を解説します。
これは、恐らく消化態栄養剤に食物繊維が含まれていなかった時代もしくは発言のあった先生の施設で食物繊維の入っていない栄養剤を採用している。
これらによる発言であったのではないかと推測します。
今回の全ての背景を考慮すると使用している栄養剤もしくは採用している栄養剤の組成について我々栄養士は完璧に把握できていますか?
ということに尽きると思います。
また、採用されていない栄養剤であったとしても常に新しい栄養剤の「栄養素」に着目し、情報収集を怠らないことは重要です。
患者さんが摂取しやすい『味・量』
メーカーさんが持ってきたパンフレットに大きくかかれた『キャッチ栄養素』
これは栄養士だけでなくても評価できます。
今回の対談をされているのは医師です。
医師が消化態栄養剤に食物繊維が入っておらず、免疫に不安がある。
この発言を聞いただけで、栄養士は栄養に対してさらに深く・広い知識が必要だと思わされる良対談だと思いました。
消化態栄養剤で腸管免疫を維持する
最後に分析だけでは、ただの批評家になってしまうので具体的なアクションプランも考えてみました。
ただし検証や十分な研究データがあるわけではなく、
また、患者さん個々によって耐性を見極めなければいけないことを踏まえて読んでください。
患者さんの栄養管理を担保するものではありません。
経腸栄養剤の種類の違いは、たんぱく質の形状の違いのみで、その他栄養素は経腸栄養剤毎に異なっています。
そのため、半消化態栄養剤、消化態栄養剤、成分栄養剤で比較すること適切とは考えにくいと思います。
あえて消化態栄養剤の利点について触れると
- 消化に有利なため下痢に有効と考えれている。
- 胃排泄、腸での滞留時間が短いため嘔吐に有利と考えられている。
上記のような消化態栄養剤の利点を活かし、食物繊維の免疫能への影響を維持できる投与方法は以下を考えます。
- 食物繊維の含有されている栄養剤を使用する。
- 食物繊維を添加する(モジュラーフィーディング)。
1については問題ないと思います。
2については粉末タイプの食物繊維を水で溶かし、消化態栄養剤とは別に投与する方法です。
粉末タイプの食物繊維は様々なものがあります。
また食物繊維といっても種類は様々です。
下記の記事PHGGについては書かせてもらいました。
『栄養士なら1歩進めたいプレバイオティクスとプロバイオティクス(PHGGとミヤBM)』
最後に我々栄養士が栄養素、栄養剤について知見も深めていきたいと思いました。
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